No−168製作記

(2002年7月〜 月)



“GOAなアンプたち”の“その6(No−122)”で、90年にK式DCアンプの世界に真空管が登場して以後、「TR式のみならずFET式も含めて半導体DCプリアンプの開発は止まってしまった。」と恨み言を書いた。この10年の間にNo−128とNo−159の2作の完全対称型MCプリアンプが発表されているのに失礼な話しではある。のだが、願いは天に届いたか(^^;

2002年6月号のNo−168“FET+バイポーラトランジスター、電源独立型 MCプリアンプ、CDラインアンプ”にはグググッと来た。これぞK先生からの半導体派への回答だ。

ごちゃごちゃ言わずにいい加減真空管でプリアンプ作ってみなさい・・・、まあしょうがない・・・半導体で作るんだったらこうすればいいのだよ。 なんて先生思ったかどうかは全く関知しませんが・・・(^^;

半導体式の完全対称型プリアンプの3作目。ちょっと見には例の完全対称型の回路構成で特に代わり映えもしないように見えるのだが、眺めるほどにかなり入念に作られていることが分かってくる。

これはかなり最終的だ。「真空管プリアンプを追い越すために」とようやくに重い腰を上げて下されたのだ・・・(^^;
こりゃぁ、作る以外にありません。
と言うわけで当HP開設後初めての新型K式DCアンプの製作となった(^^)。

問題の部品集め。部品の点でももう最終的?かな(^^;
No−168はほぼ現行品で構成されているが、一部は入手先も限られる。さらに残念だが抵抗のススムはもうさすがに入手できないだろう。実は我が家も在庫限りなのだが、ジャンク箱をひっくり返したりしたら幸いにもMCプリアンプ1台分は所要のものが集まってくれた。ありがたい。

だから、秘蔵の2SC1400や双信V2Aなどいにしえの名品もここぞと投入を決意する。当然だ。使うべきところで使わないと折角の名品に申し訳ない。が、この辺はそれで必ず良い結果になるという保証があるわけではないので、悪癖と言うか、悪あがきと言うべきかも知れない(^^;



とりあえずMCプリアンプ。回路はこう。


DC動作、ハイゲイン、理想NFB、GOA、VGA、そして完全対称動作と、高度な機能をシンプルに凝縮して小宇宙(kosmos)をなしている。これもまさしくK式ワールド。

2段目差動アンプの出力で終段上下が対称プッシュプル動作をする・・・ように策を労してあるところがミソなのだが、それをこうもシンプルに実現してしまうところが凄い。2段目出力の対アース電圧は著しく非対称という素朴な事実もあり、終段上下も完全無欠な対称動作かと言われればそうでもないのだろうが、実は非凡な対称動作をしていることは、屈託なく、あるがままの素直さ、伸びやかさで空間に現れては消えていく音達が証明している。

東芝の2SK246と2SJ103がK式では目新しい。2SJ11以来の東芝のFETの系譜が続いていて現行品だ。実は“いにしえの”と言っていいくらい古くからあるFETなのだが、ようやく日の目を見た。ディスコンにならないことを願うばかりだ。

さて、ご覧のとおりほかにもいくつか変更してしまっている。まずイコライザーとフラットアンプ間のカップリングコンデンサーがSE0.1uFではなく、SE33000pFになっている、のは値段の差についていけなかったからだが、そのため少しでもカットオフ周波数を下げるべくフラットアンプ入力側の2SK246のベース抵抗750kΩを820kΩにしている。

オリジナルではカットオフfc=159/(0.1*750)=2.12Hzだが、この節約のためにfc=159/(0.033*820)=5.88Hzと上がってしまう。まあ、可聴帯域外の話しなので影響はないのでは、と思うのだが、それぞれ1オクターブ上の21Hzと59Hz辺りからレスポンスが下がりはじめる訳だから、正確な装置と鋭敏な耳を持つ人には意味のない違いとは言えないかもしれない。

フラットアンプのゲインコントロールボリュームは20kΩにした。128(?)での経験からしても我が家ではそんなにボリュームを上げなければならないという場面が想定できないためだ。

あとはオリジナル通りで、基盤表の部品配置も基盤裏の配線もオリジナルを忠実に再現して組み上げた。
毎度お馴染みの間違い探しとしては、MCプリアンプ基盤、CDラインアンプ基盤とも部品配置図のフッラトアンプ部の初段定電流回路のC1775Aのベースとエミッタの標記が逆になっていることだけだろう。

レギュレーターがないし、MCカートリッジ専用のスーパーストレート方式なので、この基盤を2枚作ってしまうともう殆ど終わったも同じ。


ケースに組み込む前に仮に電源をつないで動作確認をする。と、あっけないほどに安定動作しているよう・・・。発振の気配もなくスムーズにオフセット調整も出来てしまった。珍しい。大抵はどこか上手く行かないものだが・・・腕が上がったかな(^^;

出力のドリフトもとりあえずは実用範囲に収まるようだ。DCゲインの大きいイコライザーアンプの方のドリフトが大きいのは当たり前だが、±250mVまでもいかないようだし、そもそもその出力をコンデンサーでDCカットしているのだから何の問題もない。

問題はフラットアンプの方のドリフトだ。この後ろに20〜32dbのDCゲインを有するパワーアンプが繋がるのだから、ドリフトはボリューム最大位置でも±5mV以内、出来れば3mV以内に収まって欲しいところだ。

が、これはなかなか難しそうだ。128(?)ではこれを許せる範囲に収めるのに大分四苦八苦したのだが、この168ではそんな四苦八苦はなくて済んだものの、やはりボリューム最大位置では数十mVレベルのドリフトになってしまう。

まあ、ボリューム最大位置で聴くことなんてことは現実的にはないので、この程度なら許容することにした。ボリューム最大位置でその範囲に収まっていれば、ボリュームを絞った状態では当然ドリフトはそれ以下に収まり、問題にならない。

実はこのこともボリュームを20KΩにした理由ではある。が、では168のフラットアンプのドリフトは必ずこうなのか?と言うと、そうでもあり、そうでもない、ということになりそうなのだが、それは後で考えよう(^^;

さて、今回の168ではフラットアンプ終段の2SC959(960)は大分熱くなる。それでも終段のアイドリング電流が記事通りに上側で7.5mA(下側は+0.6mA程度となる)であれば200mWから220mW程度の損失なので問題ないのだが、初段定電流回路のHZ6C2や2段目の2SJ103BLのバラツキによっては終段アイドリング電流もややばらつくことが予想される。

私の場合終段上側でLチャンネル7.02mA、Rチャンネル7.66mAとなった。「終段のアイドリング電流は無調整で適正値になるので、調整の必要はない。」と先生おっしゃっているのだが、アイドリングが12mAにもなって終段がアッチッチになってしまうので2段目共通ソース抵抗を調整してアイドリングを7mAに下げた、という事例報告も頂いている。

K先生おっしゃる「適正値」の明示がないので、許容範囲は不明だが、アイドリング電流が増えるほどに終段のアッチッチ度も増し、終段自体の裸の出力インピーダンスも下がる。問題は音なのだろうが、果たして許容の範囲はどの程度だろうか。と悩んだときには事例報告を頂いた方のように2段目差動アンプの共通ソース抵抗を調整すれば良い。抵抗値を増やせばアイドリング電流は減り、抵抗値を減らせばアイドリング電流は増える。


次いでケース加工。こればかりは毎度同じく根気の世界。

このアンプの製作での最大の難関はケース加工だなぁ(^^; などと思いながら電動ドリルと手動リーマーで穴明け作業にしばし勤しむ。単なる穴明けでも大きく明けてしまうとやり直しが利かないのが金属加工なのでその点だけ注意してギコギコやっているうちに作業完了。引き続きテクニカルサンヨーオリジナルのレタリングでケース前後を化粧してから配線作業を終えると、No−168MCプリアンプは目出度く完成した。

電源? 電源については、No−128(?)完全対称型プリアンプの電源部を当面流用する。何せ中身はほぼ同じもの。といっても我が家の128(?)の平滑コンデンサーはニッケミKMHの2200uF(80V)。これでもかなり奢ったつもりだったのだが、今度の168オリジナルはニッケミKMHの4700uF(35V)だ。最初の完全対称型プリであるNo−128オリジナルは470uFだったからその10倍の容量となっている。これだけ違うからには何らかの理由があるに違いない。

と言うわけで、めずらしく何のトラブルもなくNo−168MCプリアンプは完成した。
・・・と言いたいところだったが・・・・・・やはりそうは問屋が卸してはくれなかった(^^;

AC電源部を繋いで、音を出してみたところ・・・
う〜ん・・・ちょっとハムがでかい。長年電池式でハム皆無の状態に馴れているせいもあるのかも知れないが、そのレベルはちょっと気になる。ヘッドフォンで聴くと無音時のブーンはちょっと我慢できない。こりゃ駄目だ。


フォノ入力オープンではハムは出ない。カートリッジの出力をフォノ入力に繋ぐとハムが出る。片チャンネルだけフォノ入力を繋ぐとハムは出ない、両チャンネルを繋ぐとハムが出る。う〜ん、これはやっかいそう。

というのは、こういう状況は、金田式の素朴なアース処理からして、ステレオ不平衡アンプでは必然のアースループが要因となっているに違いないのだ。で、128(?)などでの経験からしても、アースループの小型化や配線引き回しの改善等の対処療法を駆使すれば、なんとかなるはずのものなのだが、なんと、今回はそれら経験的改善策が全く利いてくれないのだ。

大抵、電源トランスを引き離してみたり、めぼしい配線を動かしたりするとハム量が変動するものなのだが、今回のハム音はそんなことをしても全く一定のまま変動しない。だから、ハムを拾っていると思われる場所の目星すら付けられない。こりゃ、困った。お手上げだ・・・(^^;

と、途方に暮れつつもしばしレコードを聴く。音が出ていればハムは気にならないのだが。いっそ、電池電源専用にしてしまうか・・・ などと思いつつ2日ばかり過ぎて・・・

もしや、電源リップルが単純に出力に漏れているだけなのではないだろうか。

97年5月号のスーパーサーキット講座No.17でオールFET完全対称型プリアンプの電源変動除去特性が電源リップルの除去特性と関連付けて取り上げられているのだが、読んでいるうちに・・・はは〜ん、と来た(^^;

自分で経験しないと、「完全対称型プリの電源変動除去特性の優秀さから電源のリップルはイコライザー出力では除去され現れない」という解説を鵜呑みにして終わりにしてしまいやすいのだが、自ら実体験すると文章の行間に潜んだものも読めるようになる。

S/Nのチェックと言うことで電源の残留リップルの問題が取り上げられていること自体が、多分にレギュレータを用いないAC電源プリアンプには残留リップル=ハムの問題があることを暗示しているな、と(^^;

考えてみれば当たり前だ。何事にも限界がある。電源変動除去特性も無限ではないから「電源のリップルはイコライザー出力では除去され現れない」といってもそれは相対的なもののはずなのだ。要は現れるのだ。現れるのが当然であって、適切な処置を講じれば気にならない実用的なレベルに下がるということに過ぎない。だとすれば、今回の何をしてもハム音一定の説明がつくことになる。

ならば対処策は原理原則に従った正攻法しかないわけで、それはフィルターコンデンサーの容量を増やすことだ。

早速ジャンク箱から解体した昔のアンプの電解コンを探してきて、試しにパラに繋いでみると・・・・・・正解だった。パラに繋ぐ電解コンの容量を増やすほどにハムは減少する。色々試してみると、マイナス側の容量を増やす方がハムを小さくする効果がずっと高い。プラス側は容量を増やしてもあまり効果がない。要するにマイナス側からリップルが出力に漏れているようだ。

パラに2000uFを追加して4200uFにするとハムは私にも実用的なレベルには下がったと感じられる。調子にのって昔のパワーアンプ用の15000uFを追加したら完全と言っていいくらいハムは消えてしまう。なるほど。今回の168の電源フィルターコンデンサーの容量が4700uFであるのはこういう理由によるものなのだ。

違うかな(^^;

ということで、ハムの問題はいずれ電源フィルターコンデンサーの容量をアップすることで決着することにした。のだが、先に記したハムの出方からするとこれでは単なる対処療法に終わった可能性も高い。が、まあいいでしょ・・・(^^;

ということで、No−168MCプリアンプは完成した。

で、その奏でる音は? ・・・、生き生きとして聴いていて実に楽しい。伸びやかで爽やかで音の出方に全く屈託がない。ありのまま。
前世代代表のNo−122電池式GOAと聴き比べると・・・、な〜んだ同じじゃないか・・・ぐらいに感じたりするのも正直なところだが(^^;、まあ、僅かな違いを明確に感知して表現する能力がない駄耳なので。強いて言えば、やはり完全対称型の方が正確で懐が深い。音楽の味わいが深まる。

ま、新しいものを良く感じたいという偏向が働いているので当てにはならないが・・・(^^;

(2002年8月4日)

ショットキー・バリア・ダイオードは如何に?

久しぶりのAC電源プリアンプ、しかもレギュレーターを使用しないプリアンプは考えてみれば自分としては初めてだ。まあ、そのせいかどうか電源ハムというものに遭遇してしまったのだが、それをどうにかしようとする過程で久しぶりに128(?)用に作ったAC電源部の中を覗いた。

見ているうちにあれを試してみるか、という気分が盛り上がってきた。それは右のショットキー・バリア・ダイオード。

なんと、日本インターであのファーストリカバリーダイオード30DF2を開発された出川三郎氏から直々に「使ってみたら。良くなるよ!」とご紹介頂いたのである。今使っている128(?)用に作ったAC電源部、まさしくその30DF2を使用しているではないか。実は試そう試そうと思っていながらそのままになっていたのだ。

技術的なことを十分理解できる訳ではない。
SBDは
PNダイオードと比較してキャリア蓄積効果がなく、逆回復現象がない点、順方向電圧降下が非常に低い点に優れるが、耐圧が低く漏れ電流が大きいことが欠点だったようだ。その欠点を改善し、ショットキーバリアダイオードの利点をオーディオ用として生かせるものとしたものと思われる。

その利点とは勿論キャリア蓄積効果がなく、逆回復現象がないという、まさしくファーストリカバリーダイオードの利点を延長したところにある訳だが、果たしてその効果は、
アンプの情報量が大幅に上がり、聴感上のノイズレベルが減少し、低域がしまり高域がクリアーとなり、立ち上がりの鋭い音が得られ、音像がより明確になる。とある。

駄耳な自分のこと、いつかダイオードだけをSBDにして他は同じ部品による電源部を増設して、厳密に比較してみなければ違いなど分からないのではないかという思いもあって、なかなか手が着かずにいたというのが正直なところなのだが、今回AC電源部の内部を眺めている内にこの際ダイオード部分だけ取り替えてショットキーバリアダイオードを試してみるか、という気になったのだ。

善は急げ。こうなれば、気が変わらない内に決行だ。

果たしてその結果や如何に(^^;



早速
ブリッジを組んで30DF2のブリッジと交換する。交換前に新旧の記念撮影。左がショットキーバリアの30PHA18。右がファーストリカバリーの30DF2。


交換はアッという間に済んで、早速レコード盤に針を下ろしてみると・・・

一聴・・・雰囲気が違う感じも受けたが・・・アレ? 音が小さいぞ・・・ボリュームをいつもより右側に回してしまう。いや小さくなるはずがない。のだが・・・小さく聞こえるのだろうか。前と同じ程度の音量にしたつもりなのだが、ボリュームの位置が何故か大分上がっていて・・・、さっきまではボリューム位置が12時より右に回るなんてことはなかったように思うのだが、今は1時や2時の所まで回っている。え〜!?
我ながらちょっと信じがたいのだが、事実だから如何ともしがたい・・・

・・・・・・・・・・・・

結果、
これは良い。のではないでしょうか(^^;

実に静かなのだ。全体に柔らかくかつとてもきめが細かい。反面低音の迫力のようなものや高域の切れ込みのようなものは薄れるようにも感じるが、大人しいのとは違う。

K先生の言葉を借りれば超高分解能で非常に表情豊かなのだ。音楽の情感や色彩感がとても良い。低音の迫力のようなものや高域の切れ込みのようなものも、聴き込むほどにそれは誇張が取れたのであって、逆に帯域がオクターブ広がったようにリアルな音になったものと思えてくる。

この匂い立つような豊かで艶っぽい音の出方・・・その昔ネオハイトップがこういう音を聴かせてくれたような微かな記憶が・・・(な〜んて、これを聴いているパワーアンプはNEOが電源だった(爆))

もっと聴き込んでから報告すべきなのだが、今回は第一印象を報告してしまう。正確にはやはり電源部を増設してダイオードだけ違えてA,B比較してみないといけないだろう。が、私としては当分このままSBDでいく気になっている。

果たして聴き込む程に印象は変わるだろうか。
では電池は如何に?・・・、と続くかな(^^;

(2002年8月5日)

(続・ショットキー・バリア・ダイオードは如何に?)


「30PHA18でも良いけれど、No−168に使うのであれば耐圧は低くてよいので、よりVf(順電圧降下)の低いB6A06の方が一層力強くなってイイと思うよ」と出川氏。

ので、早速交換してみた。のが右の写真。わざわざ基盤に載せる必要はない形状のものなのだが、こうしておくと交換してあれこれ試すに便利が良いのでそうしてある。

さて、その結果だが、まずはさすがにVfが低い。整流後の電源電圧が30DF2の時と比して0.4〜0.5V程度上昇する。30PHA18では0.2Vぐらいの上昇だ。

問題は音だが・・・・・・

もう高音がどうの低音がどうのと言うレベルではない(^^;。全面的に良い。

No−168CDラインアンプでの結果も全く同じだ。

今回試したショットキー・バリア・ダイオード2種類。No−168の性能をより優れて正しく引き出してくれる。と思う。

第一印象で記したとおりの超高分解能で非常に表情豊かな音なのだ。音楽の情感や色彩感がとても良い。細かい音が良く出て余韻はとても美しく、低域もぐっと素直に下に伸びた感じで、全体として音の厚みが素晴らしく、匂い立つような音空間の雰囲気が実に楽しくも嬉しい(^^)。生楽器を直に聴くと、もの凄くパルシブでダイナミックで強靱でありながら、また滑らかで優しく繊細でもあるものなのだが、SBD化した168はその感じをより良く出してくれる。

30DF2は少なくとも31DF2であるべきだったのだろう。何も考えずに安売りしていた30DF2を買ってここで使っていたという偶然が、交換時の違いの印象をやや大きくしてしまったのかも知れない。あるいは31DF2であったならば印象が違っていたのか?・・・は不明(^^;

あえてまた30DF2に戻してみると、一聴元気が良いようにも感じるが・・・なたで切ったような高域、バスレフで持ち上げたような低域・・・ぐらいにも感じてしまい、全体的に軽薄な感じで、要するに音が安っぽくなってしまう。まあ、こんな表現をしてしまったら凄く違うよう受け取られてしまうだろう程の差がある訳ではない。のだが、微かな差がそう感じさせる。音の品に差が出てしまうのだ。

では、30PHA18とB6A06の差は?・・・・・・う〜ん、よく分からない(^^; より伸びやかになったような気もするが・・・それは幽霊を見たと言うレベルのことのような気もする(爆) で、まあ、これは分かったら続・続・・・で、ということで(^^;


なお、言うまでもなく以上は私の個人的感想に過ぎないので、そんなに良いのか?と興味を持たれた方が追試したら全然そうじゃない!ということがあっても一切関知しません。ので悪しからず(^^; え、ハナから信じていない? ・・賢明です(^^;(爆氏)



モダンジャズの巨星がReunion。

要するに爺(ジイ)さんたち(^^;なのだが、それはそれは凄い人たちだ・・・。その衰えを知らぬテクとスピリットには舌を巻いてしまう。

ありがたい。これがDSDレコーディングで残されて本当に良かった。
はっきり言って奇跡的名演&名録音だ。今となってはBlue Noteで彼らのライブを聴こうとNew Yorkまで出かけて行っても願いは永遠に叶わない。
もうNo−168CDラインアンプでこのライブ会場にワープするしかないのだ。

観客の歓声や嬌声に混じって巨星達の息使いを感じながら珠玉の9曲を間近に楽しむ。やつも一緒だ。

今日は特等席だぞ。
そうね。

やつの微笑みが嬉しい。

この刹那・・・
熱いジャズスピリットに魂が揺さぶられ暑い夏の至福の時が花火のように鮮やかに炸裂して散っていった・・・

(2002年8月11日)

(電池は如何に?)

と頑張るつもりだったのだが・・・

まあ、悪くはない。その清楚で鮮烈な音は良い。
のだが、SBD化した只のAC整流電源より優れるか、と言うとそうとも言えないようで・・・。

歯切れが悪い。のだが・・・
素直に認めることが出来ない複雑な心境・・・(^^;

右はNational 
NEOの外皮を剥いだもの。右から2番目にある部品が電池の裏側のマイナス電極。電池電源を拵える場合ここに半田付けするわけだが、その電極自体は外皮によって内部の亜鉛電極に押しつけられて接触しているに過ぎないのだ。な〜んと、それではいくら電池に直接半田付けしたって、実は接点だらけなのではないか!と言う事実。


何を今更。と知っている方はとうに知っていた事実でしょうが、どうもその辺にも理由がありそうな音が気になったりもするのである。

では、ということで電池のマイナス電極側の外皮をちょっと剥いで、その外部電極を外してしまい、内部の亜鉛電極に直接半田付けすると、これがかなり良くなって、博物館から出してきた左のNational 
NEO Hi−Top電池の音にかなり近づく・・・ということらしい。のだが、亜鉛電極はなかなか半田付けにコツがいるし、そもそも電池電源製作の手間がかなり増してしまう。

もうそこまでしなくてもいいのかな・・・と軟弱になる > 私(^^;

ああ、それにしても左のNational NEO “Hi−Top”。

今の
NEOはデザインはそっくりだが
“Hi−Top”ではないのだ。
ほら、赤い“
NEO”の下の“Hi−Top”の文字がないだろう・・・。ホントね。とやつ。

左の電池が今もあればあるいは結果は違っていたのかもしれない・・・
と往生際が悪い。

死んだ子の歳を数えるようなことをしてもしょうがないでしょ。
そりゃ、そうだ・・・
が、比較しなければNo−168は
NEO電池電源でも十分以上に良い音だ。とは思う・・・(^^;



(2002年8月13日)

(つづき)

続いて、No−168 CDラインアンプ。
回路はこう。




要するに只のフラットアンプなのだが、その醸し出す、強靱さのなかにも細やかで柔らかい表情にはゾクッとしたりする・・・(^^;
案外これが真空管っぽい表現力なのかなぁ・・・とは持たない者としては確かめようもない推測。


さて、実は製作記としては書くべきことがない。

いや、大したアンプではない・・・という意味ではなくて、特に記すべき事由もなく出来上がった、ということである。

敢えて記すとすれば、製作上の要点は半導体のペアマッチの確保だということぐらいか。安いものだし、某有名部品店等のペア販売に頼ることなく、多数購入して自らペアを取るべし。と。こういうことが結果として良い音のK式DCアンプを作ることになる。

なんて分かったようなことを言ってもしょうもない。ので、K先生のオリジナルと異なる点について弁明すると、まず入力のアッテネータの1.5KΩ。これは我が家ではこのくらい減衰させないと音が大きくなりすぎるからだが、これで大体△30db。結局、このフラットアンプのゲインを殆ど入力側で相殺するようなものではある。

これでも殆どボリューム最低位置近くで聴くことが多いから、CD出力をパッシブアッテネータで受けてパワーアンプにダイレクトに繋いでいるという例が多いのも頷けることだ。

が、それではケーブルを含めたパワーアンプのドライブ能力に欠けるとして導入するのがこのCDラインアンプであるわけだが、それにしてもK先生のゲイン設定は大きすぎるような気がするのは、我が貧しいリスニング環境のせいだろうか(^^;

次に、初段の負荷抵抗の2KΩと位相補正の1KΩは、1.8KΩと1.2KΩのススムが枯渇したが故のピンチヒッターである。このため、2段目共通ソース抵抗を3.9KΩとしてこれによって終段のアイドリング電流を適切なものとした。

他はオリジナルどおりだ。
幸いなことに発振のようなトラブルもなく、出力のドリフトもボリューム最大位置でも±5mV程度に収まったのである。いうことなしだ。

ということでNo−168CDラインアンプについて書くべき事は尽きた・・・(^^;



と、ここで終わるはずだったのだが・・・


「No−128(?)完全対称型プリアンプ」との違いは那辺にあるのだ・・・? と、余りに問題もなく出来てしまった余裕からか、128と168との違いはどこに?という興味も湧いてくるのだった。

かっこつけなくても良いでしょうに・・・。
え、うん。128(?)では出力のドリフトを収めるのに大分難儀したのに、今度の168が何でこんなにドリフトが少なく収まっているんだ?と疑問に思っただけだよ。(^^;

と、まあ、そうなのだが(爆)、どうもそのキモは今回の168CDラインアンプ(フラットアンプ)に何気に起用された50KΩというゲインコントロールボリュームにありそうだ。128では10KΩだったのだが、ゲインコントロールの範囲を広げたいからといって、単純に大きくしてよいというしろものではないように思える。

128(?)のフラットアンプでは、当初ボリューム最大位置にすると±100mV程度のパワーアンプ並以上の出力DCドリフトが出てしまい、結局前段のゲインアップで許容範囲に収めた経緯がある。もっとも、その時は何も考えずにゲインコントロールボリュームを勝手に20KΩに変更してしまっていたという罪もあったわけだが、今回の168ではゲインコントロールボリュームが50KΩでありながら、最大ゲイン位置でもかつてのGOAプリ並(±5mV以内)のドリフトなのである。

それがどうした? なのだが、大体、出力に現れるドリフトはクローズドゲインに比例するものなのである。
だから、
           ボリューム     クローズドゲイン(最大)
オリジナル128     10kΩ         11倍
128(?)         20kΩ         21倍
168            50kΩ         51倍

なので、168は、オリジナル128の約5倍、128(?)の約2.5倍もドリフトが大きくなりやすい筈なのだ。
にも拘わらず今回の168CDラインアンプのドリフトはボリューム最大位置でも小さい。これは何か理由があるべきことではなかろうか・・・(^^;

その理由は単純にはそれだけ168のフラットアンプのオープンゲイン設定が大きくてその分NFB量が多く、逆に128フラットアンプのオープンゲイン設定は不足だったのだ、ということになる筈なのだが、
それぞれの記事によれば、今回の168フラットアンプの負荷1KΩのオープンゲインは実測40dbなのに対し、128のフラットアンプの方は同じく負荷1KΩで44dbと、なんと128の方が大きい・・・。NFB量で見ると168は最大ゲイン時で34dbなのに対し、128は39db・・・。

       ボリューム位置    負荷     オープンゲイン  クローズドゲイン     NFB量
168      MIN         1KΩ       40db          0db         40db
        CENTER       9KΩ?     58db         20db         38bd
         MAX       50KΩ       68db         34db         34db

128      MIN        1KΩ        44db          0db          44db
         MAX       10KΩ        60db         21db         39bd

???・・・うーん・・・・・・

データ的には128のボリュームMAX時でも40db近いNFB量が確保されているから、168に比して128の方がドリフト量が多くなるという理由はこれでは全く見出せない・・・(^^;

ペア組が十分じゃ無かったんじゃないの・・・、作りが下手だったとか・・・
うん、それも考え得る理由だなぁ・・・

いや、もとい。何を言うか。128では負荷20KΩ時のデータがないから分からないだけなのさ。と強がる > (^^;
のだが、もう一度試してみる必要があるかな、と、
既にNo−168 CDラインアンプ TRバージョンを作り始めていたのだった。



最初はこういう回路にした。





168の記事にちらっと出ている2段目トランジスタバージョンのイメージ(あれはイコライザーアンプのイメージのようだが・・・)を受けて2段目差動アンプの電流帰還抵抗は680Ω。

2段目共通エミッタ抵抗はイメージの4.7KΩでは計算上も動作しないのが明白なので動作するように変更した。

初段の1.8KΩはゲインに関係するので変えたくはないのだが、ススムの1.8KΩは切れてしまったので2KΩで代用する。この程度なら大勢に影響はなかろう。さらに1.2KΩと47Ωも切れてしまったので、近傍の数値で代用する。初段の位相補正のSEコンもその関係で300pFとした。という訳ではなくて実は手持ちがあったという理由での300pF。

2段目カスコードアンプは省略。K先生もフラットアンプではない方が良い、とかつておっしゃっていたように思うし・・・

トランジスタにはまたしてもついつい2SA726Gと2SC1400を起用してしまう。のは懲りない悪癖(^^;
初段はあまりgmも違わないので2SK30ATMにしてしまった。

一応オリジナルとなるので基盤上の部品配置などを自分で考える必要がある。が、さほどの苦もなく出来た。A726のベースとエミッタの足の配置がA872とは逆なのが、今回のパターンではかえって都合が良い。

基盤2枚を拵え、電源を入れて動作確認をすると上手く動作する。発振の気配もない。
のだが、出力のドリフトはやはりオリジナルFETバージョンに比べるとちょっと大きい。
計算上はこれでFETバージョン程度のオープンゲインにはなるように思うのだがなぁ・・・、と考えてもオープンゲインを測定するすべもないのでどうにもならない。

あるいは、2段目差動アンプが大きな電流帰還抵抗により只のカレントミラーに近づいて、結果同相抑圧効果が下がるためなのかもしれないなぁ・・・とも推測などして、やはり2段目にTRを起用するのは難しいのか?と、128(?)の時の悪夢がちょっとよみがえってくる。

あれこれ対策を考える前に、取りあえず音を聴いてみると、いつもの聞き慣れた音のようではあるのだが・・・。
オリジナルのFET版168CDラインアンプに劣っているとまでは言わないが、残念ながら、勝っているという感じでもないなぁ・・・と、実は比較すると多少の差が・・・。せっかくの名石2SA726Gも2SJ103に適わないのだろうか・・・(嘆)。いや、そんなはずは・・・やはり2SK246の音が2SK30より優れているのかなぁ・・・



と、実はこういう経緯もあって、漠然と思っていたボリューム50kΩのキモいところについての思いも深まり、2段目TRの出力インピーダンスを実測してみなければならないな、という課題認識が明確になってきたのであった・・・。(^^;
<とろい


完全対称型の要(カナメ)は、2段目上側の出力インピーダンスが終段上側の入力インピーダンスよりも十二分に高いこと。にある。と思うのだが、今回の設定は負荷となるボリューム設定が50KΩなのである。

50KΩなら大したことはないのでは?、というと、終段上側、ひいては2段目上側にとってそういうわけにはいかない。はず。終段下側の入力インピーダンスは大体のところで終段のベース抵抗1.6KΩに等しく、よって低いものなのだが、終段上側の入力インピーダンスは、その1.6KΩではなくて、終段の電流ブースター効果によって、負荷インピーダンス×終段電流ゲインとなってしまうので、この場合、50KΩ×2(A級PPだから)×30(終段の電流ゲイン、1.6KΩ/51Ωで概算値)=3MΩ!(最大値)と、低いどころか、もの凄く高いものになるのだ。

うーん、完全対称型の2段目は終段の上を担当するか下を担当するかで天地ほどもの違いがある。ということは置いておくとして、
現実には、ボリューム最大状態で使うということはほぼ無いし、出力に繋がる機器の入力インピーダンスもパラに効くので、実質<3MΩとなるのだが、それにしても2段目上側の出力インピーダンスは大丈夫か?と思える数値なのである。

2段目が終段に対して電流出力であるためには、2段目の出力インピーダンスは終段の入力インピーダンスよりまあ1桁は高いものであって欲しいのではなかろうか。そこでこの
2段目設定。果たして電流帰還を掛ければ所要の出力インピーダンスが得られるものなのだろうか?



先ずは電流帰還を掛けない裸の2SA726の出力インピーダンス、と言うか(直流で測っているだけなので)出力抵抗を測ってみた。

トランジスタの出力インピーダンスというものはIc値によっても変化し、通常Icが大きいほどに低くなる。のはトランジスターの一般でアーリー効果というそもそもの物性に起因する現象らしいがそれは置いておいて、ここでは今回の実動作状態を考慮してIc=1mAで測ってみる。

左図の回路で先ずVc=10Vとしてベース側のボリュームを調整しIc=1mAとしておいて、その状態のままVc=50VにしてIcの変化を見ると・・・Ic=1.68mAとなったので、出力インピーダンス(抵抗)=(50−10)/(1.68−1)=59kΩだ。

あら〜(嘆)。このレベルだと、負荷が数十から数百Ωのヘッドフォンアンプとしてなら十分な値といったところであって、最大50kΩが負荷となる今回の設定では全然ダメだろう。

こういう状態で動作させると、NFBが掛かった後では問題ない出力が得られても、裸の状態では波形の上側の振幅が伸びない上下非対称の波形になってしまう、と、スーパーサーキット講座だったかどこかでK先生が解説されている。要するに、終段下側は負荷の上昇が入力インピーダンスに何の影響も及ぼさないので、5極管特性素子のエミッタ接地動作そのままに負荷に比例したオープンゲインになるのに対し、終段上側は、負荷の上昇が終段の電流ゲイン倍に倍増されて終段の入力インピーダンス上昇に直結しているため、2段目上側の出力インピーダンスがこれに対応できる高いものでなければ、上側は50kΩという高い負荷に比例したオープンゲインにならないということだ。このためそのような状態ではオープンゲインで上側の振幅が伸びない上下非対称の波形になってしまい、結果、総合的なオープンゲインが理論値どおりに確保できず、音的にもまずいことになるだろうことは勿論、NFBの減少によって出力オフセットも負荷を大きくするにしたがって加速度的に増大してしまう、という結果になるのだろう。
(ん、ということは、ここにも2段目がTRだとボリュームを大きくしたときにオフセットが大きくなる理由が見えたような・・・(^^;)

それでは困る。だからTRの場合2段目に電流帰還を掛けて出力インピーダンスの上昇を図る訳だが、エミッタ抵抗に680Ωという数値を使えば、今回求められる所要の出力インピーダンスが得られるのだろうか?が、大いなる問題点、キーポイント。となるわけだが・・・
さて、結果や如何に?

先ず電流帰還がかかるようにベース抵抗2kΩを入れる。2kΩという設定は勿論今回の実回路に合わせたもの。そしてエミッタに電流帰還抵抗を入れて上と同様な操作をして出力インピーダンス(抵抗)を計測する。結果、
エミッタ抵抗値 Vc=10V Vc=50V 出力インピーダンス
  240Ω  1mA 1.10mA       400kΩ
  680Ω  1mA 1.05mA       800kΩ
え〜!・・・(嘆)。なんとエミッタ抵抗680Ωでも800KΩにしかならないではないか・・・。
これではとてもダメではないでしょうか・・・(嘆^2) 結論は早く、無情だ・・・


う〜ん。そうなのか・・・

となるとオリジナルのJ103ではどれぐらいの出力インピーダンスが得られているのだろうか?確認せずにはいられないではないか・・・

ので、J103も測ってみる。左図で同様にVc=10VにしてId=1mAになるようにゲートのボリュームを調整し、その状態のままVcを50VにしてIdの変化を見ると・・・

えぇぇ・・・(驚) 殆どIdは増加しない。テスターの針の動きは目盛の分解能以下で、まあId=1.005mAといったところだろうか。

だから、なんと出力インピーダンス(抵抗)=8MΩ!なのだ。
なるほど・・・これならまず十分だろう。

なるほど、なるほど・・・

K先生がJ103は2段目に最適だと言われ、フラットアンプにはカスコードアンプを付加しないで使用している理由もこれでようやく分かった。というもの。

K先生、何気に手に入るFETを使ってちょいちょいとアンプを設計製作されておられるようで、実は違うのですね。感服です(^^;

「君が分からなかっただけだよ」 と天の声・・・。はっ 
m(__)m

ついでに、そう言えばこの168に限らず完全対称型プリアンプの2段目の電流設定が当初に比較すると大分絞られているのも、終段アイドリング電流のバランスを余り外さないようにするという意味の他に、2段目の出力インピーダンスを高く保つためにも少ない方が妥当だからかも知れないですねぇ。


う〜ん、ではTRでは無理なのだろうか、とも思ったが気を取り直してA726に戻り、さらに高い出力インピーダンスを得るべくエミッタ抵抗に2KΩを入れてみた。Vc=50VのIc=1.01mAとなったのだが、これでも出力インピーダンス(抵抗)はようやく4MΩだ。4MΩなら十分ではないかとも思うが、これはちょっと使いたくない。この設定では2段目の電流ゲインも電圧ゲインもマイナスになってしまう。

であれば、選択肢はもはや一つだ。
右のようにカスコードアンプを付加して測ってみた。結果は期待通りとなった。これで測るとVc=50VをかけてもIcはピタッと1mAのままだ。
だから、出力インピーダンス(抵抗)は∞だ。

いや∞ということは実はあり得ない訳で、テスターの分解能を遥かに超えてしまっているだけで、本当のところは数十MΩなのかなと思うが、まず所要値を超える十分に高い出力インピーダンスであることに間違いはない。

結果、いにしえの名石、2SA726Gを起用して2SJ103に対抗するためにはカスコードアンプが必要だ。という結論なのである。(多分2SA872Aの場合でも同じではなかろうかしら)


さて、2段目にトランジスタを起用するならフラットアンプでもカスコードを付けるべきだ、という結論で決着する前に、終段自体の性能というか、終段自体の出力インピーダンスを探っておくべきだろう。と思う。

「一部だけ高性能にしてもしょうがなかろうに」 という天の声が・・・(^^;

というのは、いくらハイインピーダンスでドライブしてやっても、それが終段自体の5極管特性を理想的にするという効果を生じるものではないからだ。終段自体が最大51kΩの負荷を電流ドライブ出来る出力インピーダンスとなっていなければ、2段目がいかに理想的なハイインピーダンスで終段を電流ドライブしても無駄だし、逆に、その場合理論通りに終段の入力インピーダンスが上がることはないので、2段目の出力インピーダンスも相対的にもっと低くても良いということでもあるからだ。

結局、終段自体の出力インピーダンスは終段自体で負荷に対応した適切なものに設定しておかなければならない訳。

で、測定結果はこうなった。
  Ib  Rb  Re Ic(Vce=10V) Ic(Vce=50V) Zo(出力抵抗)
  -  0  0     5mA     6mA    40kΩ
  -  0  0     7mA    8.5mA    26.7kΩ
  -  0  0     10mA    12.5mA    16kΩ
0.59mA 1.6kΩ 56Ω     5mA    5.25mA    160kΩ
  - 1.6kΩ 56Ω     7mA    7.35mA    114kΩ
0.79mA 1.6kΩ 56Ω     10mA    10.5mA    80kΩ
0.99mA 1.6kΩ 56Ω     15mA    15.7mA    57kΩ
1.19mA 1.6kΩ 56Ω     20mA     -     -


Reが56Ωなのは手持ちの都合。
最初にどうでも良いことだが、電流帰還をかけた場合の測定でベース電流Ibも測っておいたので、この場合の終段電流ゲインも実測したことになるのだが、終段電流ゲインの直線性は大変良くてAi=(20mA−5mA)/(1.19mA−0.59mA)=25倍となって概算値1.6k/56=28.6倍に大変近い、のはK先生がスーパーサーキット講座で解説されているとおりだ。


さて、測定環境の貧しさを勘案する必要はあるが、それなりに意味ある結果となっているようだ。

1〜3はエミッタに電流帰還抵抗をいれない裸のC960だが、これを見ると、128オリジナルのフラットアンプの音量調整ボリュームが10kΩだったこと、そして終段のアイドリング電流設定が5.6mAであったことの理由が分かるように思えるのだが、どうだろうか。
同様に、4〜8を見ると今回の168のフラットアンプの音量調整ボリュームが50kΩで、また終段のアイドリング電流が7.6mAである理由も分かるように思う。

共に終段が負荷の変動幅の全域で電流出力になる限界あたりでセッティングされている・・・ということなのだ。

終段が負荷に対して電流出力になっているというためには、最低限 出力インピーダンス>負荷 が条件だろう。完全対称型プリの終段はA級動作だから128の負荷は最大で20kΩであり、168は100kΩなので、少なくとも終段の出力インピーダンスがそれらを超えるところで動作設定されているのだな、ということが、上の結果で分かるわけだ。

電流出力の場合、その出力インピーダンスが負荷を遥かに超えて高ければ、結果その電圧ゲインは負荷に比例する。その出力インピーダンスが負荷に近づいてしまうほどに得られる電圧ゲインは下がり、出力インピーダンス=負荷のときには、得られる電圧ゲインは本来得られるゲインの半分(−6db)になる筈だ。

そう言えばNo−168のフラットアンプのオープンゲイン、GainVR:MAX時に理論値の−6dbとなっているようだし、No−128の方も同様に−5dbとなっているようだ。偶然の一致かな(^^;

ということは、2SC959(960)を終段に起用しているNo−168の終段上側の入力インピーダンスは、終段自体の設定から理論値の−6dbで最大1.5MΩ。

う〜ん・・・2SJ103を選択し、シンプルに仕立て上げられたフラットアンプ・・・実に絶妙なセッティングではないですか。正にこういうものこそ本当のシンプル化というものでしょう。

電流帰還量の設定といい、動作電流の設定といい、ゲインコントロールボリュームの設定といい、素子の選択といい、繰り返しになるけれど、K先生、実に綿密にアンプを設計製作されておられるのですねぇ。(^^;


「君にほめられてもしょうもない・・・」 はっ m(__)m


ところで、こうしてみると完全対称型の終段は電流出力でなければならならないのか?とも思ってしまうのだが、実は終段自体が負荷に対して電流出力でなければならないという必然性はないはず。だいたい真空管式では終段には3極管が起用されている。あちらはそもそも電流出力の筈がない。真空管式の方では出力真空管の出力インピーダンスが高くなければならないなんてことは話題になった事もないはず。

では、半導体式では何故に出力段も出力インピーダンスは高くなければならないと解説され、実際このように電流出力の範囲で動作がセッティングされているのだろうか?

そりゃぁ、球と石の違いだわなぁ・・・では違うか(^^;

まあそれは、半導体にはV−FETでもなければそもそも3極管特性の素子なんか存在していないし、5極管特性の素子をエミッタ(ソース)接地で使ってしかも変動する負荷に対して増幅のリニアリティを確保するためには負荷の最大値以上の出力インピーダンスが必要条件となるからだ、ということだろうし、また、終段下側は別に努力の要もなく5極管特性のエミッタ(ソース)接地動作をするので、これとプッシュプル動作をすべき終段上側素子も当然5極管特性のエミッタ(ソース)接地動作をしなければならないから、ということでもあろう。そしてそうするためには2段目上側は上で計算したとおりの高い出力インピーダンスが要請されるのだ、ということになるわけだ。

と言うわけで、その高い出力インピーダンスの要請をシンプルにかなえる素子が2SJ103という訳なのだが、このJ103の代わりに、A726を使うとなれば、特に今回の50KΩのように負荷が高い場合には、シンプルを諦めてフラットアンプでも2段目はカスコードアンプにする必要がある。ということになるようだ。



と、以上の経過を経て、基盤は作り直され、こうなった。




2段目にカスコードアンプを付加すれば出力インピーダンスの問題は完璧にクリアしてしまうので、電流帰還用エミッタ抵抗は単に2段目のゲインを調整する役割を担うだけですむことになる。

したがって、ゲイン計算などをしながら出力ドリフトや音などを勘案して、最終的に回路図のような定数設定となった。
というとカッコ良いが、実は手持ちのススムを使って終段のアイドリング電流を上手く7mA前後に収めるなどのパズルを解いた定数設定、という面も無いわけではない・・・(^^;

結果。

やはり2段目の出力インピーダンスは十分高くなければいけないようだ。ややベタッと張り付いた感じのあった低音が素晴らしい弾力感を取り戻した。艶っぽい表情も大変良くなった。生々し〜い(^^)。出力ドリフトの点でもFET版程度に安定で問題のないものなった。総合的にFET版のオリジナル168CDラインアンプを凌駕する音になった・・・とまで言っては手前味噌が過ぎるか・・・(^^;
しかし、K先生の完全対称型というアンプ型式。見かけはシンプル。が、その内実、私ごときには手に余る高度な秘密を含んでおりますねぇ・・・(^^;

まあ、今回はこれでめでたしめでたしなのであった。



さて・・・フラットアンプですらカスコードが必要ということは、いわんやイコライザーアンプにおいておや・・・では?とNo−128(?)が気になる。

ので、オープンゲインとNFB量/周波数を改めて見てみれば・・・、

NFB量 →   at 1KHz      at 10Hz
128         33db          18db        △15db
168         34db          31db        △ 3db

この明快なる事実。

No−128からNo−168に至って、終段の電流帰還量・出力インピーダンス、2段目の出力インピーダンスなどが見直された結果であると言える訳だが・・・、

こうなると128(?)の方・・・、
どうしようかな・・・(^^;


ねぇ、そんなことより、もうコスモスが咲いたんですって。
へぇ〜・・・、じゃあ、見に行ってみるか・・・

(2002年8月16日)

(補足)

ちとDCな方面から、「No−128完全対称型プリアンプの電源フィルターコンデンサーはどうも4,700uFだねぇ。470uFは単なる回路図のミスプリのようだよ」と、ご指摘を頂いた。

ありゃまあ・・・、と、早速MJ95年6月号の78ページを見てみたら、またやられてしまった・・・(^^; 470uFとなっている回路図の隣の写真をよくよく見てみると、電解コンデンサーに表示された容量値はまさしく4,700uFだ。な〜んと。

だからどうした、という事もないのだが、上の方でNo−168の電源のフィルターコンデンサーの容量が増えたとしてその理由を邪推した根拠はどこにもなかったことになる。

ま、自分の技量不足を棚に上げて他に転嫁しようとしたばちが当たったかな(^^; だが、ミスプリのお陰でフィルターコンデンサーの容量の問題に目を向けることが出来たということもある訳なので、まあ怪我の功名としておこう。(^^;

ところで、MJのミスプリには今更文句を言ったところでどうにもならないのだが、最近はトランジスターの基本も理解出来ていないことが明白なミスプリが載っており、ますます雑誌としての信頼を失っていくかのようだ。まあ、見る方はその方が明らかにミスだと気づくというメリットはあるが、雑誌の行く末にはちと危惧を感じざるを得ない。なんとか頑張って欲しいものだが。

(2002年9月23日)

(旧ロットは如何に?)


2002年の秋は穏やかに過ぎて、ようよう紅葉も里に降りてきたかと思われたある日、奇跡は起こった。

まさか今頃になって2SC959のいわゆる真正“旧ロット”がやってきたのである。それも未使用で保存状態も極めて良好な“超”の付くべき一級品だ。

型番「2SC959」がフルネームで印刷され、写真右ではキャンケースに数字の刻印が確認できる。

このように刻印付きで「2S」が省略されない由緒正しき旧ロットの2SC959(960)−2SA606(607)は、多分1970年代前半まで(73年まで?)のものに違いない。

K先生の製作例に写っている姿で確認してみても、無線と実験1973年8月号掲載のNo−1“B級pp無帰還DCパワーアンプ”や74年1月号のNo−5“A級30W+30W DCパワー・アンプ”、同年8月号のNo−10“全段FET構成 B級100W+100W DC POWER AMP”でこのタイプの2SC960−2SA607が確認されるが、それ以降はほぼ「2S」表記のない2SC960−2SA607になっているようだ。

すなわち、このタイプは金田式DCアンプシリーズの黎明期の頃までのものなのだ。

私は幸いその頃を知っているが、当時
この型番フルネームの2SC959(960)を手にしたことがあったものかどうか、もう記憶は失われているので分からない。また当時使ったものは時の経過と共に錆びて朽ち果ててとうに代替わりして失われているから、もう分かりようがない。もう30年も前のことなのだ。

それがこのようにほぼ新品の時の状態を保ったままで未使用で残っていたとは・・・。それだけでも奇跡的としか思えないのに、それが私のもとにやってくるとは・・・(感涙)
TMさんには深く感謝申し上げます。



そこでこの際なので、いくつかの2SC959(960)を並べてみた。

@2SC959(LA34)
A2SC960(LA15)
B2SC960(L5XB)
C2SC959(S)(L7ZB)
D2SC960(KA85)

同じ型番の同じトランジスターの筈なのだが、製造年代が違えば当然ロットが違ってくる。

並べるだけでは芸がないのでテスターだけで測れる項目だけなのだが、HfeとZo(出力抵抗)特性を測ってみたのである。結果は下のとおりだ。

ふ〜む。いにしえの頃の旧ロットのHfeは小さいということは風の噂には聞いていたが、今回やってきた@2SC959(LA34)もLランクとは思えないHfeで、他のLランクのC959(960)たちの半分程度しかない。

DのKランクは勿論一番Hfeが大きい。このように2SC959(960)−2SA606(607)のHfeのランク分けは大きい順にK−L−M−N(番外?のP)だったと思うのだが、いにしえの頃には違っていたのだろうか。

また、出力インピーダンス(というか出力抵抗)の方では、これが同じトランジスタか、と思えるほどの違いになってしまっている。

う〜む。巷ではロットによる音の違いについてもまことしやかに語れることがあるようだが、あながち根拠のないことでもないのかもしれない。同じ型番のトランジスタではあるが、Hfeは大きく、出力インピーダンスは高く、と改良が施されてきている、という解釈ができる測定結果なのだ。が、結果、車のモデルチェンジの如く名前だけ同じで中身が違う・・・なんていう状況なのか、どうかは勿論分かるはずもない。(^^;

さて、こうしてみると特性的には最も劣っているように思われる真正“旧ロット”の2SC959(LA34)なのだが、こういうものはありがたく活用するべし、ということで早速No−168MCプリのA2SC960(LA15)と交換してみたのである。実はこの2SC960(LA15)も私的には秘蔵品を投入したつもりのものなので、違わないんじゃないか、と高をくくっていたのだが、
結果、

・・・やば〜い(^^;; 

元に戻せなくなってしまった・・・


VC=10V Vc=30V Zo VC=10V Vc=30V Zo
2SC959 LA34 5mA 5.5mA 40KΩ 10mA 11.2mA 17KΩ
C960 LA15 5mA 5.3mA 67KΩ 10mA 10.7mA 29KΩ
C960 L5ZB 5mA 5.1mA 200KΩ 10mA 10.2mA 100KΩ
C959S L7ZB 5mA 5.1mA 200KΩ 10mA 10.2mA 100KΩ
C960 KA85 5mA 5.5mA 40KΩ 10mA 11.2mA 17KΩ



(2002年11月4日)

(つまみは如何に?)


右(一番上)は、No−168のボリュームに取り付けてみた“音の変わるつまみ”

「聴いてみたまへ・・・」 はっ。m(__)m という訳である方からお借りしたもの。

何で出来ているのかは良く分からないが、なかなかに重く質量がある。

この組合せでは見た目バランスが悪いが、これを付けるとボリュームの操作フィーリングがメーカー製の高級アンプのようになるのだった。

・・・・・・
いくらなんでも、これで音が良くなったなんて言ったらまずいんじゃないの(^^;

が、何となく音の輪郭がしっかりして全体に滑らかに実在感が増したような気がしたりする(爆)
SN比が良くなり静かになった・・・という感じもある・・・
うっそぉう(^^;

だが、音を出している際にこのつまみをボリュームからはずすと、瞬間フッと魂が抜けるように音が軽くなる感じまでするのだった・・・

いやいや、ブラインドテストやられたら絶対分からないよ・・・
う〜ん、確かにそうだ。やはり気のせいだな。

と思いつつも、質量が利くのかなぁ・・・なんて考えたりもするのであった。


(2002年12月28日)

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